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デジタルマーケティングの課題に対する僕らなりの向き合い方


いま主流の「インターネット広告配信プラットフォーム」と言えば、どんな種類が浮かびますか?

1996年、「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始したと同時に、日本のインターネット上でバナー広告の配信がスタートしました。それから24年が経ち、今日では数多くの配信プラットフォームからユーザーの元に広告が届けられています。

その後、ここ数年でGoogleをはじめとした検索エンジン、SNS広告、アドネットワーク、そしてDSPといった配信プラットフォームが主流となりました。ゆえに、私たちUNICORNのことをクライアントさまやパートナーさまに説明をすると

「UNICORNはアドネットワークですか? それともDSPでしょうか?」とよく聞かれるのです。

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確かにUNICORNは、アドネットワークやDSPに似た配信プラットフォームであるため、一見どちらかの配信方法だと思われることもあるでしょう。ただ、私たちはそのような“主流”や“常識”という枠にとらわれず、そしてあらかじめ“ジャンル”を決めた上でプラットフォームを作ったわけではありません。

UNICORNの設立前、私たちは親会社であるアドウェイズにて、数多くの広告商品を取り扱いながら、広告運用の最適化を行っていました。ただ、その“最適化”という作業はあまりにも人の手を頼るもの。実際に労働集約の業務ばかりしている仲間たちを見ながら、このままの未来で良いはずがないと感じていたのです。

また、フラウドが多い広告ネットワークや、明らかにしつこいと思ってしまうようなリターゲティング広告など、広告の真の効果を妨げ、儲ける手段として技術を悪用する広告企業は未だ業界に蔓延っている現状。彼らはその実態を深く理解しようとせず、もしくは不正を認識していながらも、目の前の利益のために価値のない広告を配信し続けています。私たちはその現状を見る度に「本当にその広告費がビジネスの成長の為に使われているのか」と疑問を感じていました。

私たちは、この二つの“広告業界が抱える課題”にしっかりと向き合う必要があると感じ、またそれらを解決していく仕事は誇りであると考え、UNICORNの開発を進めてきました。

本記事では、UNICORNが描くこのようなビジョンを実現するために、どのようなアプローチを用いて取り組んでいるのか。UNICORNトップデータサイエンティストの井上からお話させていただきます。

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井上 碩
博士(情報理工学) Top Data Scientist、UNICORN株式会社。
CTO、Mist Technologies株式会社。特任研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科 東京大学情報理工学系研究科修了、日本学術振興会特別研究員(DC1)。研究科長賞。修了式では総代を務める。 大学院生時代にMist Technologies株式会社を創業。その後アドウェイズ(UNICORNの親会社)とのM&Aを経て、現職。 UNICORNでは、主に機械学習の開発・運用を主導。


人と機械の共生 - マーケターはよりマーケターらしい仕事を

普段、クライアントのビジネスを成長させる立場にいることで、常に感じていることがあります。

広告業界は、今までほとんどの仕事を人力で埋め合わせをしており、凄まじい労力をかけて業務に取り組まないとクライアントのビジネス成長に繋がらない」という現実です。

私たちUNICORNは、人間がやるべき仕事は、人の心を動かすところにフォーカスすべきであり、データに基づいたパフォーマンスの向上は、得意なシステムが担うべきだと考え、これらの課題を解決したいと考えています。

全てのトラフィックを機械学習に落とし込む

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UNICORNのシステムは、毎秒約50万回の入札を行っていますが、それぞれに対して平均208回の機械学習の推論を行っています。

つまり、毎秒1億回以上の推論が、クライアントからお預かりした広告にまつわるさまざまな確率を計算しているということ。例えば、CTRの予測はその基本中の基本ですが、広告枠・オーディエンス・クリエイティブの組み合わせ数は天文学的な数字になる上に、状態は刻々と変わるため、それぞれの推論が同じ確率を出力することはほぼありません。

そして、広告の視認・クリックから課金行動といったフィードバックは継続的な学習によって配信に反映され、数ペタバイト(1ペタバイト=1,000,000ギガバイト)のデータを保管しています。このようなシステムには、もはや人間が太刀打ちすることは不可能でしょう。

私たちはその配信した結果を見て、解析し、運用するといった作業を全て機械学習に任せることで、圧倒的なスピードとボリュームを実現することができるのです。

なお、立ち上げ時期から直近までの累計コストは10億円を上回る費用が掛かっています。ただ、これは僕らが信じる姿に近づくための妥協できない投資であり、貫く必要があると考えています。

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人が判断をするポイント

一方で、機械学習が苦手なこともあります。例えば、クリエイティブを作ること。アドテク業界で実験的な取り組みはありつつも、UNICORNは全自動でクリエイティブを作るような取り組みを行う予定はありません。

クライアントの商材はすべて異なるものであり、ユーザーを惹きつけるポイントも違います。無理に機械学習に落とし込もうとすると、商品の類似性を抽出するシステムになってしまい、多様性が損なわれてしまうからです。

より一般的なUNICORNの哲学を述べるならば、仮説をたてるのは人間の役割です。この商品をどのように訴求すればどのようなユーザーを獲得できるのか、という膨大な可能性の中から、効率よく仮説を考えるのはその商品をよく知るマーケッターに敵うものはいません。その仮説を、UNICORNのエンジンは圧倒的なスピードで検証することができるのです。


価値のあるデータのみを学習 - 機械学習の精度とクライアントのビジネス成長にも繋がる

機械学習は、単に人が手でやっていた仕事を代わりにやってくれるだけではありません。人には物理的に処理できないデータの量を分析しながら学習し、リアルタイムで将来を予測する事ができるのです。そしてより精度の高い予測は、定めた目標により正確に辿り着く事に繋がります。

機械学習の精度を高める為には、推論も大事ですが、いかに機械が正しい学習が出来る環境を提供するかも非常に重要なこと。特にUNICORNでは、不正や不当な手段により、ユーザー行動・本意がねじ曲げられて解釈され無いよう、データクレンジングには細心の注意を払って取り組んでいます。

誤タップを誘導する広告枠の排除

誤タップとは、ユーザーの意図に沿わずにクリックが発生し、ページ遷移とアトリビューションが行われてしまうことを言います。

スクロール中に広告先に飛んでしまったり、バツ印を消そうとしたのに広告をタップしたことにされてしまうことは、スマートフォンを触ったことがある方なら誰しもあることでしょう。。このようなユーザー体験を損ねる広告は、正しいコンバージョンを推定する上でバイアスとなってしまうだけでなく、ユーザーのクライアントに対する心象を悪くしてしまいます。

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誤タップを誘導するような構造は、メディア側が収益性を上げるために悪意を持って実装している場合も中には見受けられます。このような「ハック」がまかり通ってしまうのは、デジタル広告業界全体にとっての損失だと私たちは考えています。

そんな誤タップにおいて、UNICORNが取り組んでいる対策の中から2つをご紹介します。

まず、1つ目は広告枠内でユーザーがタップした場所を取得し解析すること。UNICORNの広告は独自のjsが動いており、広告枠内でユーザーがタップした場所を記録しています。そして、誤タップだと判定したクリックは、ページ遷移もアトリビューションもすることはありません。

2つ目は、高いCTR(click through rate)の枠を買わないというルールです。もちろんCTRは低すぎてもいけませんが、CTRが高すぎる広告もまた、その後のユーザー行動に結びつかないことがデータの観察からわかってきました。そこでUNICORNでは、統計学上のルールに基づいて有意に高いCTRを持つ広告枠をブロックリストに自動的に登録し、買付けが行われないようにしています。

これらの施策は、短期的な収益を追い求めるプラットフォームにはできないことです。それゆえ、消化率やCTRがKPIとなっているようなクライアントにはご満足いただけないかもしれません。しかし、広告が果たすべき役割、“明日のビジネスの糧”を考えれば、長期的に見て大きな投資となることでしょう。

ユーザーに確実に認識された数値のみを反映する

動画広告が世の中に広がり、GoogleやFacebook、Twitterなどのメガプラットホームが導入を始めたことにより、ユーザーが広告に直接反応(Click)したものだけではなく、動画広告を見た(View)事自体も、間接的に成果に貢献したと評価される方法論が業界全般的に定着する事になりました。一方、動画広告を見たという定義は各企業毎に異なっており、再生された時点、再生2秒、再生5秒などそれぞれ異なる基準で広告にエンゲージされた事になります。

UNICORNでは、ユーザーが動画広告を見たという定義を10秒として定めています。再生された時点や、スタートからたった2秒では、ユーザーの本意で再生した可能性が少なく、5秒でも動画広告が伝えたい内容がユーザーに伝わったと判断するには短い。ゆえに、10秒であれば間違いなくユーザーが本意で動画広告を見たという強いシグナルになり、機会が学習するデータとしても申し分が無いためです。

第三者からみるUNICORNの透明性

UNICORNは現在、全ての入札データを第三者のフラウド探知専門企業に検証してもらっています。不正はほぼ起こらない想定ではありますが、広告の掲載環境を徹底的に管理し、ビジネスファーストの指標でデータを計測しています。これは、クライアントのビジネス保護という観点に加え、機械学習のデータ精度の観点からもFalse(偽)のデータを学習される事を徹底的に排除し、クライアントの広告最適化ロジックの精度を高く保つためです。

実際、第三者機関の調査レポート(2020年10月)によると、UNICORNと同様にCPMで広告トラフィックを提供している企業の平均不正Impの割合は2.4%である事に比較し、UNICORNでは0.02%という結果でした。(ABCの三段階評価ではA評価)

[修正版] UNICORN様_2020年10月フラウドレポート(ページ抜粋)


不確かな思い込みで可能性を潰さない

スマートフォンの普及とアドテクノロジーの発展は、デジタルマーケティングの業界にも大きな影響を及ぼしました。膨大なデータを元に精度の高いターゲティングと計測が可能となり、いつからかユーザー獲得の効率化はデジタルマーケティングで最も重要な要素となっています。

それに伴い、効率化に対するセオリーや成功ケースなどの方法論も急激に広まり、例えば“こういうジャンルにはこういうセグメント”などの定義付けや、“類似ユーザーのみにターゲティングをする”などの流れが正論になり、可能性よりも確率が優先される時代になったと感じています。

しかしその反面、“人が考えたセグメントが、しかもリリースされる前の段階で、まだ分析するデータもほとんど無い状況で、どれぐらいの精度があるのか?”という疑問が生まれてきます。過去の履歴に基づくユーザーの行動データはどれぐらいの活用価値があるのか、それは可能性に目を閉じるまで、効率化を優先するほどの完璧なデータや方法論なのか、など、釈然としないことが多いのです。

そのためUNICORNは、人が考えもしなかったけれど、実は良い効果があるかもしれない。そういったことを絶対に逃さない、という考え方に基づき、機械学習による完全運用を行っています。0か1かで判断する世界ではなく、実数の確率で判断をし、ユーザーがコンバージョンしてくれる可能性を見逃さない。私たちはこのようなアプローチ方法が必須になると考えています。

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0か1かで判断しないアプローチ

具体的には、UNICORNは恣意的な閾値を用いません。閾値ルールとは、例えば、CVRが10%以上の枠のみを買う、といったルールのことですが、UNICORNはそのような基準で買付可否を判断することはありません。そのようなルールは可能性を排除し、持続的な広告配信と適切な仮説検証に結びつかないからであり、UNICORNは予測された多様な確率に基づき、ファジーで滑らかな分布となるように、適切な価格となるように、配信量をコントロールしていきます。

ただし、悪意のあるメディアに対しては逆に厳密なルールを敷いていることも改めてお伝えしておきます。


UNICORNのこれから

形やセオリーなどに囚われず、クライアントを含むステークホールダー全体に価値を届けたい。その可能性を逃さないためにはとことん突き進んで行くのが、UNICORNの今まで歩んで来た道でありました。

人が自らの手で細かい調整を繰り返すのではなく、自社の商品をどのようなポイントで興味を持ってもらうようにするのか。その仮説が投影されたクリエイティブの制作に多くの時間を投資出来るようすると同時に、人が処理できるレベルを遥かに超えるデータを機械学習を用いて分析しながら、ビジネスの目標に向けて自動的に最適化を行う環境を提供する。

ただし、機械学習をするデータには、ユーザーの本意が反映されたデータのみが含まれるように、高い基準のルールを定め徹底的にデータをクレンジングして行う事で、クライアントの広告費用が価値のある所のみに使われるように取り組む。それが、UNICORNというプラットフォームです。

一方、まだUNICORNはプラットフォームとして世の中にアプローチできていない問題もあります。

よって、これからは今のUNICORNをより強化しながらも、私たちが日々処理をしているデータを、クライアントのマーケティング思考や施策に活用してもらえるよう取り組んで行く予定です。過去の成功事例に囚われる事なく、一番適しているマーケティング活動が行なわれる事が当たり前な未来。私たちはその未来を早く実現させる為に突き進みます。


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