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【登壇レポート】インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿

2023年12月8日(金)、Exchange Wire Japanが主催するマーケティングイベント「ATS Tokyo 2023」に、取締役の井上孝仁が「インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿」というテーマで登壇をいたしました。今回は、その登壇内容をご共有いたします。

「ATS Tokyo 2023」とは

Exchange Wireが主催するマーケティングイベント。デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、基調講演、パネル、インタビュー、ネットワーキングなどが行われた。デジタル業界の発展に向けた重要な知見とノウハウが結集。2023年に6年ぶりに復活した。


登壇した経緯

昨今のデジタル広告業界は、情報が流れる速度、量、そして粒度が細かくなっている一方で、多くの「気づきにくい落とし穴」も存在しています。大半の企業はそうした落とし穴に気づかないことから、広告に対する正確な評価や計測が行うことができず、広告費を余計に消費し、事業成長に繋げられていないケースが後を絶ちません。

UNICORNはサービス開始当初から「クライアントの成長とともにビジネスを成長させる」という考え方を大切にしており、このような広告業界に蔓延る課題に対して、自分たちにできることは何かと日々模索をしながら向き合い続けてきました。この度の登壇も、そうした広告のあるべき姿の実現に向けた取り組みの一環となります。


インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿

今回の「ATS Tokyo 2023」では、取締役の井上孝仁が「インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿」というテーマで登壇をいたしました。以下は、井上の登壇内容を一部加筆し、まとめたものとなります。ぜひご覧ください。

▼UNICORNについて

全自動型広告配信プラットフォームであるUNICORNは、スマートフォンのありとあらゆる広告枠に対し、網羅的に広告配信を行うことのできるプラットフォームです。機械学習に特徴を持っており、ハイパフォーマンスでパワフルな広告配信を行うことが可能です。

▼インターネット広告業界が「理想的な状態ではない」

私たちは、現在のインターネット広告業界を「理想的な状態ではない」と日々感じています。そのため、あるべき姿を描き、実現できるような取り組みを続けています。

なぜ「理想的な状態ではない」のか。本日は、スマートフォンのアプリ広告主が、広告出稿を行うケースを例に挙げ、インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿についてお話をしていきたいと考えています。

インターネット広告の大きな特徴は「広告の費用対効果を計測」できることです。

しかし、実際は正しく計測できていない、と私たちは考えています。

それはなぜなのか。計測の仕組みを話す前に、アプリ広告のコンバージョン計測が抱える課題について、整理をしていきたいと思います。


▼アプリ広告のコンバージョン計測について

アプリの広告の効果測定は、MMPと呼ばれるツールを用いて計測・可視化する方法が一般的です。コンバージョンの計測の仕組みは「クリックスルー」「ビュースルー」の2種類があります。

ビュースルーコンバージョンとは「ユーザーが広告を閲覧したが、そのタイミングではクリックをせず、のちほど自然検索などでコンバージョンをしたもの」を計測する手法を指します。クリックスルーコンバージョンの説明は、ここでは割愛させていただきます。

この、ビュースルーのコンバージョンは、果たして直接的な広告送客効果があるのか、判断するのが難しいと私たちは考えています。

加えて、アプリ広告には「ラストタッチ」の計測の仕組みが多く採用されています。このラストタッチ計測に対して、私たちは複数の課題点があると考えており、本日は主に、ラストタッチ計測の課題点について、紹介をしていきたいと考えています。

▼課題1 成果判定の優先順位

1つ目は「成果判定の優先順位」について。

この図はユーザーが広告を閲覧し、アプリをインストールするまでの流れを図式化したものです。
どちらもWebのゲーム攻略サイトで広告をクリックした直後にアプリをインストールしています。そして、その4日前にSNSのアプリ内で広告をクリック又は動画広告を視聴してます。

果たして、広告の成果はどちらに付くのでしょうか。一見、ゲーム攻略サイトに付くと思われがちですが、実際はこの場合、手前のSNSアプリに成果判定が付きます。

このような判定となるのは、アプリ面で取得できる広告IDをMMP側に送信することで、成果判定の優先度が高く評価される仕組みになっていることが原因です。(他にもあるが割愛)

▼課題2 媒体毎にタッチ基準がバラバラ 

課題の2つ目は、広告媒体ごとに、タッチポイントの基準がバラバラであるという点です。この図は、広告媒体4社のタッチポイントを比較した図になります。

媒体社Aは、ユーザーが動画広告を10秒視聴後にクリックを送信する仕様になっていますが、媒体社Bは、ユーザーが動画広告を2秒視聴後にクリックを送信する基準になっています。
このように各社の広告タッチポイントの基準がバラバラなため、広告媒体横並びで広告の費用対効果を比較することは実質不可能であると考えています。

▼課題3 媒体間のラストタッチ争奪戦

課題の3つ目は、媒体間のラストタッチの争奪戦が発生しているという点です。

現在、誤タップを誘発する広告枠や視認性の低い広告枠など、ユーザーから嫌われる要素の多い広告が多く存在してます。
これらの広告が蔓延している背景には、大量のクリックやビューをばら撒くことで、本来は別の広告媒体に成果があるはずのコンバージョンを奪うことができ、結果として広告効果が高いと見せかけることができるという事情があります。これは、ラストタッチの技術を不正に利用して、広告効果を誇張してるとも言えます。このような状況が改善されていないため、広告評価の仕組みがさらに複雑化していると私たちは考えます。

▼課題4 プライバシー配慮がない構造

最後の課題点は、プライバシーに配慮がないビジネス構造になってしまっている点です。

ラストタッチの計測技術は、ユーザーの許諾を得ずにユーザーを識別する方法が一般的であり、広範な計測カバレッジを持つことができるため、広く採用されてきました。
しかし、この方法は業界の持続的な発展を促すものではないと私たちは考えています。

皆さんもご存知の通り、現在は個人情報の取り扱いに対する意識の変化が高まっており、政府や団体、個人のブラウザレベルで、広告IDやCookieに対する利用の制約・制限が強化されています。言い換えると、広告IDを用いたラストタッチの計測は、制度が大きく下がってきているということです。

▼ラストタッチ計測の課題点まとめ

▼ラストタッチ計測課題の検証

以上のように、ラストタッチの計測には課題がいくつもあり、正しく広告を評価できているとは言い難い状況になっています。次に、それを証明する上での具体的なデータを共有します。

このデータは、とあるアプリの広告配信データになります。本データは、アプリマーケティングに強みを持つ株式会社アプリボットさまから提供していただきました。

図のグラフに注目をいただきたいのですが、青の部分がアプリ全体のインストール数です。緑が自然流入のインストール数、赤が広告媒体Aのインストール数となります。

一見、広告媒体Aの配信を停止すると全体のインストール数が下がるように思えますが、広告媒体A停止後も全体のインストール数にはさほど変化がなく、逆に自然流入のインストールが増える結果になっています。

なぜ、このような結果になったのでしょうか。仮説ではありますが、広告媒体Aは、広告配信をせずともコンバージョンするユーザーに対しても、広告配信を続けていたからだと私たちは考えています。

このようにラストタッチの計測は、レポート上では費用対効果の高い広告配信ができていると考えられがちですが、実際はそうではない可能性が大いにあります。

そのため最近、一部のアプリデベロッパーさまの間では、ラストタッチ計測に変わる新しい手法として、インクリメンタル計測が注目されつつあります。

▼インクリメンタリティ 

ここからは、インクリメンタル計測とは何かをお話ししていきたいと思います。 

あくまで広告施策として定義をさせていただくと、インクリメンタリティとは、広告施策を実施しないと発生しなかったであろう成果のことを言います。

今回は、広告起因のコンバージョン、広告に接触せずとも発生したコンバージョン、広告に接触したが、非接触でも発生する予定だったコンバージョンとして、3つに分けて説明をさせていただきます。

一般的に、事業主が広告を発信する際は、1つ目の「広告起因のコンバージョン」を獲得していくことが目標です。しかし、先ほどのデータを参照すると、非接触でも発生する予定だったコンバージョンに対しても、広告配信を続けていることが分かります。

この、1つ目の「広告起因のコンバージョン」をどのように計測していくかに対し、インクリメンタル計測が注目されています。

計測方法を簡単に説明をすると、広告配信を行うユーザーグループ、しないユーザーグループを分け、広告を配信を行います。その後、配信を行ったグループに対し、KPIがどのように変化したのかを改めて計測して検証を行います。

私たちUNICORNも、独自のインクリメンタル計測の機能を提供しております。広告配信を行うグループと、ダミー広告を配信するグループ、2つに分けて広告配信を行い、ダミー広告の配信の中で、ビュースルーコンバージョンが発生するかしないかを計測、分析を行っています。

この状況で、ビュースルーコンバージョンが発生し続けている場合は、オーガニックのコンバージョンを不当に吸い上げてしまっている状況であると考えられます。しかし、私たちの仕組みを活用すると、直接的な送客効果が低い広告トラフィックや、広告枠に対しての配信を抑制したり、配信停止をしたりなどのアプローチが行え、マーケティングやプロモーション効果の最大化につながります。

ただ、インクリメンタル計測は、分析の難易度が非常に高いため、その分活用方法が複雑化します。広告媒体、施策、クリエイティブごとに計測をしなければならなかったり、自社のサービスの状況に合わせてPDCAを回したりしなければならないなど、工数もかかり、専門性も必要となります。

▼インクリメンタル計測プラットフォーム「POLARIS」

ただ昨今、アプリ広告に関しては、インクリメンタル計測に特化したプラットフォームが登場したので、共有させていただきます。こちらは、アメリカの会社が提供している「POLARIS」というサービスです。

POLARISは、日本ではまだ認知度が高くはありませんが、Meta社にマーケティングパートナーとして認定されるなど、徐々に世界的に知名度を伸ばしています。

活用方法としては、各データをPOLARISに送信を行うと、インクリメンタルが自動的に測定されます。

そして、POLARISが提供するダッシュボードを活用すると、計測結果を比較することが容易にできるようになり、自社に合った広告の評価指標を模索、検討することが可能になります。

昨今、POLARISは世界各国で導入されつつあります。もし、自社でアプリを運営されており、広告の計測や評価に対して、課題を感じている方がいらっしゃるならば、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。私たちUNICORNも、POLARIS導入のサポートを行っておりますので、少しでもご興味がある方はお問い合わせください。

今回は、ラストタッチの計測は現状、正しく計測できていないことがあり、新しい広告の評価方法を模索する必要がある。また、アプリ業界では、一部のアプリデベロッパーさまの中で、インクリメンタル計測という方法が代替案として注目されつつある。という話を共有させていただきました。

▼まとめ

ラストタッチの計測技術は、これまで多くのインターネット広告で貢献してきました。しかし、時代に合った形ではなくなり、「そろそろ代替手段を考えるべき」と思い始めた事業者の皆さまも、増えてきたのではないでしょうか。

しかし、これまでずっと信じてきた概念を疑い、新しい概念を取り入れていくことは、非常に難易度が高いことだと私たちも認識しています。

ただ、このままの状態では、無駄な広告費を使い続け、事業の成長につながらない可能性も大いにあります。ぜひこの機会に、新しい広告評価の指標について、検討を進めてみてはいかがでしょうか。

冒頭でもお話をさせていただきましたが、私たちは、現在のインターネット広告業界を「理想的な状態ではない」と日々感じています。クライアントの事業成長に直結しない広告が蔓延っていたり、ユーザーから嫌われる広告体験が多かったりするこの業界を、私たちが先頭に立ち、変えていきたいと考えています。

広告は本来、クライアントのビジネスに貢献をしたり、ユーザーにとってセレンディピティな体験を生みだすなど、価値あるコンテンツです。私たちは広告のあるべき姿をより実現できるよう、さまざまな取り組みを行っていく予定です。今後も、UNICORNをよろしくお願いいたします。

▼登壇を終えて

最後に、井上の登壇後の感想を記載いたします。

「多くのセッションを通じてさまざまなお話を聞くことができ、私自身とても勉強にもなりました。私自身の登壇もたくさんの皆様に聞いていただき、感想もいただくことで、とても良い経験になりました。今後も、UNICORNは広告のあるべき姿を実現するため、こうした発信を積極的に行っていきたいと考えています。もしどこかでお会いすることがあれば、ぜひよろしくお願い致します」

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

引き続きUNICORNでは、「価値のある広告のみを提供し、お客様のビジネス成長に貢献する」という思想を基に、より価値のある広告やマーケティングサービス提供に最善を尽くします。

UNICORN

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