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アトリビューションからでは見えなかった真実

優れたマーケターやマーケティング組織であるほど、表示されたものだけが100%だと信じず、その中のメカニズムや環境などを正しく理解する努力をしながら、どうするべきかを真剣に悩み、自らの方針を固め、実行して行く共通点を持つ──。


あともう少しで本当のポストiOS14の時代が始まりますね。皆さん、ご準備の方は如何でしょうか?

IDFAが取得できない比率が非常に高くなる事に連れ、これからのマーケティングデータをどう見ていくべきなのか、大変悩ましい時期でもあるかと思います。

マーケティングデータとどう向き合うべきか」を改めて考えてみる良いタイミングでもあるかと思い、アトリビューションを提供する会社に在職していた時期には見えなかった個人的な気付きをシェア出来ればと思います。

記事をお読みの皆さん全員に受け入れられる考え方ではないかもしれませんが、改めて「マーケティングデータ」についてを考えてみるきっかけとなったら良いな思います。

まずは、自己紹介からですね。

現在は、UNICORNという広告配信プラットフォームにて、マーケティングコンサルタント兼マーケターとして活動をしています。UNICORNにジョインする直前までは、アプリマーケティングの効果を測定するアトリビューションを提供する会社(MMP、Mobile Measurement Partner)に在職していました。

アトリビューションを利用している方なら馴染みのあるCustomer Success部門と、マーケティングデータをどう整備し活用すべきかの課題を解決するSolutioning Consultant部門のAPAC地域の責任者として、多くのマーケター、データーエンジニアの方々と数多くのケースに携わって参りました。
前職の前でも、今は無いですがParty Trackというアトリビューションの立ち上げ時期に海外での展開を担当していましたので、自分で言うのもおこがましいですが、この分野においては詳しい方だと思います。


INTRO: アプリマーケティングの風潮

アトリビューション(トラッキング、効果測定)という便利かつ、有益なソリューションの登場により、現代のマーケターはデータに基づいて、マーケティングの施策やチャネル(媒体)の良し悪しを判断することができるようになりました。

今の時代においてデータとは、意思決定の根拠でもありながら、組織内のコミュニケーション(結果共有・報告)の共通言語という位置付けとして、マーケターにとっては不可欠な存在です。ただし、データには理解すべき重要な性質があり、それは生成される条件や環境によって見え方や解釈も変わるという性質です。

残念ながら現代のアプリマーケティングでは、こういうデータの性質を見落とし、レポート上に表示されたデータだけが全てであるように受け取られる風潮が強くなっています。特に日本においては、マーケティング、プロダクト、データエンジニアリングなどの業務が分かれている事が多く、マーケターが普段からデータの性質について接する環境が少ない事も起因しているかと思います。

ここからは、媒体とアトリビューションのデータを軸に、マーケティングデータの性質を把握しながら、顕在する落とし穴について記載していきます。


マーケティングデータに関する気付き

マーケティングデータは各プラットフォーム、媒体ごとにバラバラです。当然なことながら、各広告配信事業者達はそれぞれ異なる企業体。それぞれ違う会社なので、データの階層、名称、定義などが全て独自の基準となっています。

例えば、各社が同じくCampaignの下の層に細かい粒度のデータを管理していますが、これをGoogleではAd Group、FacebookではAd Set、TwitterではLine Itemと呼ばれているのが、マーケティングデータの性質を理解する分かり易い例です。(こちらについては、ここで詳しく記載しました。記事を読んで頂いた後、参考程度にどうぞ)

一方、imp、click, install(conversion)など、デジタルマーケティングの領域における共通的な指標もあります。これらの指標のおかげで標準化されてない各データも、アトリビューションの管理画面上で全てをまとめ、横並びすることが可能になりました。アトリビューション側では、さらにアトリビューション判定における優先順位、有効期限、不正トラフィックの検出など、公平で正確な判断ができるような仕組みを揃える事で、マーケターがより簡単にデータからインサイトを得られるよう貢献しています。

ただ、アトリビューションも100%完璧な仕組みではありません。それが僕の気付きです。(完璧では無いから悪い、という話でも無ければ、完璧で無い事に対してアトリビューションに責任がある話でもありません)

現時点でアトリビューションが仕組み的に完璧では無い理由は、広告配信における各社の定義が異なる上で、広告を配信する役割と計測する役割が分かれている構造的な要因です。

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アトリビューションは計測の基本となるトラッキングリンクを発行しますが、ClickやView(Impression)といったユーザーの反応を送る主体はあくまで広告配信側です。計測側は、実際ユーザーがどう広告に接し、どう反応したかまでは把握できないので、広告配信側が送った情報のみを元に判断をします。

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広告を見たユーザーが興味を持ってストアに移動したのも、Xボタンを押し間違ってストアに移動したのも、全てアトリビューション側では「同じClick」として捉えます。興味がそそられて見続けた動画広告も、一瞬でスクロールし頭に全く印象が残って無い動画広告も、全てアトリビューション側では「同じView」 として捉えます。

媒体側でView-throughの計測ができないという理由で、ViewをClickとしてアトリビューションに送る事や、媒体の独自の基準で動画視聴が数秒経つと自動的にClickとしてアトリビューションに送る事などは、今この瞬間でも起きている事象です。

これらは、アトリビューション側にいた時期では見えなかった事でした。

(この詳細の部分は、自分の別の記事や、Alphaの正田さんの記事で詳しく記載されていますので、もっと知りたい方は下記のリンクからご確認ください)

今までの内容のまとめ

✔︎ 各広告配信事業者はそれぞれ異なる企業体。

✔︎ 各会社毎に独自のシステム的な仕様、独自な基準で、ClickやViewなどを定義し広告を配信する。

✔︎ アトリビューションは、データを受け取る役割。どう配信されているかまで確認できる術は無い。
(広告の誤タップも興味を持ったClickも、レポート上には同じClick。一瞬でスクロールされた動画広告も、見続けた動画広告も、レポート上には同じView。)

✔︎ アトリビューションが悪い話では無く、アプリマーケティングに「環境的な制限」が存在する。


どう向き合うべきか

残念ながらこれだと言う解決策は持っていません。正確には解決策と考えられる方法論はありますが、現実性が無いと言うのが正しいかと。僕に物凄い力と権利があって、広告配信事業者の全ての基準を揃えるように標準化することができるなら話は簡単ですが、そう簡単には行きません。なので、これは、デジタルマーケティング業界全体の課題として、力と意思を合わせながら取り組んでいかないとならないものです。

一方、一人のマーケターとして、一つのマーケティング組織として、「選択」する事は出来ます。「データだから」、「アトリビューションのレポートではそう見えるから」と、全てを丸飲みするのではく、各社の特徴や基準を理解して上で、アトリビューション側のデータを参考しながら、「ここは評価が少し膨らんだ可能性がある」などマーケター自らの判断を入れて意思決定をしていく事が、マーケターとしてのレベルアップに繋がるのでは無いかと思います。

「 複数の媒体のうち、ROASとInstallボリュームが一番良い媒体を選んで広告を継続する」 というアクション単体に価値は無いと考えています。単に高い・低い数値を選ぶだけなら、誰がやっても良い、もはや人がやる必要もないのでは無いでしょうか。この役割において人がもたらす価値とは、数字だけでは分からない、「何故、そうなったか」 の因果や状況を、調査・ヒアリングする事ができ、その上で数字だけで見る場合とは異なる意思決定をする事が出来るからではないかと思います。

少なからず、この業界に携わってきた身として言えることとしては、優れたマーケターやマーケティング組織であるほど、表示されたものだけが100%だと信じず、その中のメカニズムや環境などを正しく理解する努力をしながら、どうするべきかを真剣に悩み、自らの方針を固め、実行して行く共通点を持つ事、でした。

iOS14.5以降からは、ユーザー識別に頼る効果測定が苦難になります。マーケティングチャネルをどう評価して行くか、Probabilisticも使えなくなったらどう対応すべきか(Webの掲載面は捨てるか、それとも競争が減る機会として捉えるのか)など、マーケティング組織としてどう向きあうべきなのかは、今までの概念を一旦リセットして議論してみる事と、取引のある媒体の特徴を改めて理解していく事からスタートしてみるのは良いかと思います。


最後に、iOS14.5以降の変化については、Repro社主催、UNICORN社、AppsFlyer社、yappli社、iRidge社が共催する「App Marketing Conference 2021」(3/16~3/17の二日間)にて行われる「IDFAオプトイン後のアプリマーケティングを語る」というセッション(3/16 15:25 - 16:05)にてお話もさせていただく予定です。ご興味ある方は是非ご視聴ください。


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参考記事

1. 標準化されてないマーケティングデータについて

2. MediaによってそれぞれViewやClickの定義が異なる事について





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