業界注目度上昇中!「ボリュメトリックビデオ」は、どれほど革新的な技術なのか。仕組みや活用法などを詳しい人に聞いてきた
「ボリュメトリックビデオ」――。日本語で言うと「自由視点映像」。
少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、今、多くの企業がその先進性や将来性に期待を寄せ、事業・技術投資を行なっています。
「ボリュメトリックビデオ」とは、人物・位置・動きなどの空間全体を3次元データ化し、撮影とほぼ同時に3D映像を生成できる技術のことを指します。
UNICORNは先日、この先端技術を用いた、広告クリエイティブの効果を最大限可視化するサービスの提供をスタートしました。
▶︎UNICORN、全く新しい映像体験が可能なボリュメトリックビデオを活用した「XR Ad」の提供を開始(プレスリリース)
しかし、まだまだ世の中においての認知度は低く、実際に技術を活用している企業も国内では限られていることが現状です。なかには、このような聞き慣れないカタカナのワードを聞くだけで、身がすくんでしまう方もいらっしゃるかもしれません。
かくいう私たちも「ボリュメトリックビデオ」にはどれほど革新的な技術が用いられ、どんな仕組みや背景によって生まれたのかなどの詳細については、専門家ほどの知識はありません。
そこで今回は「ボリュメトリックビデオ」についてもっと知見を深く、より広めていくために、国内において本領域の先駆者であり、UNICORNとパートナーシップ提携をさせていただいている株式会社クレッセント(以下、クレッセント社)のスタジオに伺い、気になることをたくさん聞いてきました。
「ボリュメトリックビデオ」は次元を超えた新しい技術……?
田井(U):本日は、取材にご協力いただきありがとうございます!はじめに「ボリュメトリックビデオ」の仕組みや特徴について、伺っていきたいと思います。
「ボリュメトリックビデオ」を用いて生成したデータは、一般的な写真や動画のデータと、どのように異なるのでしょうか?
小谷代表(C):こちらこそ、本日はよろしくお願いいたします!
簡単に言うと「ボリュメトリックビデオ」とは、3D映像を生成する技術のことを指します。実は、1985年くらいから研究されている分野であり、最近やっと実用化されるようになったんですよ。
具体的な仕組みを説明すると、まず、人物・位置・動きなどの空間全体を、複数台のPCやカメラを用いて撮影し、3次元のデータを作るんです。その3次元のデータとAIのアルゴリズムを活用して、3D映像を自動で生成するのですが……
田井さんは、2次元は平面の広がりを表し、3次元は立体的な要素を含んだ空間を表すと、聞いたことはありませんか?
田井(U):数学の授業で習った記憶がうっすらあります!
小谷代表(C):例えば、スマホで撮影した写真は、2次元の静止画ですよね。そして動画は、2次元の静止画に動きを加えたものです。そのため、いくら高い解像度で撮影したり、構図に工夫を施したりしても、平面の広がりしか表すことができません。
対して「ボリュメトリックビデオ」は、3次元データ(3D)を生成することができるため、自分の好きな角度から自由に対象物を見ることが可能です。つまり、写真や動画との大きな違いは、“次元”が異なることなんですよ。
ちなみに「Volumetric Video」を直訳すると「体積のある動画」という意味になります。
前田(U):なるほど……わかりやすくご説明いただきありがとうございます。この3次元データは、さまざまな用途に活用することができそうですね。
小谷代表(C):まさにそうなんです。3次元データを活用すると、360度全方位から視聴できる映像を生成できたり、VR・ARと組み合わせて新たな体験を提供することができたりなど、多くのコンテンツを生み出すことが可能になります。
なおこれまでは、そうした3次元のコンテンツを0から制作するのには、とてつもない時間とコストが掛かっていました。しかしこの「ボリュメトリックビデオ」の登場により、クオリティは下がることなく制作が簡易化され、コストも大幅に削減することが可能になりました。現在は実用化が加速し、新たな可能性が大きく広がっています。
ここまでの話で、何かご不明な点はありますか?
田井(U):えっと……。すみません! 一瞬、時が止まっていました。今、必死でイメージして、多くのことを理解しようとしています!
小谷代表(C):いえいえ(笑)、私も一度に多くのことを説明してしまいましたからね。よかったら、実際にスタジオを利用し、体験をしてみませんか? その方がより理解いただけるかもしれません。
田井(U):た、体験させていただけるんですか!?
小谷代表(C):もちろんです! 実際にスタジオで「ボリュメトリックビデオ」の技術を使って、3D映像を一緒に制作してみましょう。自慢になりますが、このスタジオは、世界初の商用のボリュメトリックスタジオなんですよ。
それでは田井さん、スタジオの真ん中に入り、15秒ほど動いたり喋ったりしてもらえませんか。
田井(U):え! 急に何をしたら良いか……どうしよう。
前田(U):せっかくだから、自己紹介をしてみたらどうかな?
田井(U):確かに、それはグッドアイデアですね!
小谷代表(C):とても素敵な自己紹介、ありがとうございます! では早速、撮影した映像を3D化させていただきますね。
自己紹介の3D映像はこちら(PC、スマートフォン、タブレットなど、さまざまな端末から視聴いただけます)
自己紹介のAR映像はこちら(視聴の際はスマートフォンやタブレットを活用ください)
田井(U):なんと、これは本当に新体験です。3D化された自分を初めて見ました……。
確かにこうした3次元のデータを活用すれば、さまざまなコンテンツが生まれそうですね。実際に体験してみて、よりイメージが膨らみました。
冨田さん(C):実は最近、最新バージョンへのアップデートにより、以前に比べてとてもリアルな3D映像を制作することが可能となったんです。
自分たちも驚くくらい解像度が上がり、テクスチャを乗せられる形状もさらに自然になったため、より実物に近い3D映像を提供することができるようになりました。
小谷代表(C):現在、技術の進歩は急激に加速しており、近い将来、芸術、スポーツ、エンタメ、教育など、幅広い領域で3D映像が活用されていくと私たちは考えています。もちろん、UNICORN社が手がけられる広告コンテンツにも、大きく期待しています。
とはいえ、まだまだ課題が残っていることも事実です。「ボリュメトリックビデオ」はグリーンバックで撮影を行うことが基本なため、例えば透け感のある洋服や、束ねていない髪の毛などの、透過してしまう素材を3D化するのは少し難しいんですよ。田井さんの髪型も、束ねていただくことでさらにクオリティを上げることが可能です。
反対に、私や前田さんの髪型は、とても撮影しやすいです。
なぜUNICORNは「ボリュメトリックビデオ」を広告に活用したのか
田井(U):お話を聞かせていただいて「ボリュメトリックビデオ」は、想像以上に可能性を秘めた技術だと感じました。私たちも広告を通して全く新しい映像体験を訴求できることに、とてもワクワクしています。
小谷代表(C):ありがとうございます。ところで、どのようなきっかけで、UNICORNはこの領域に目をつけてくださったんですか?
前田(U):実は、2018年頃から、事業と結びつけたいと注目をし始めていました。世の中に5Gが普及すれば、ユーザーは容量の大きなコンテンツにいつでも簡単に触れられるようになります。そのような環境に対し私たちは、広告もそれ相応のリッチなコンテンツを準備する必要があると考えていました。その中の一つが「ボリュメトリックビデオ」を活用した広告だったんです。
小谷代表(C):なるほど、そういう経緯があったのですね。私たちもちょうどその頃に「ボリュメトリックビデオ」を本格的に事業に取り入れることを決めたんです。
冨田さん(C):現在、クレッセント社はいくつかのボリュメトリックビデオシステムを活用しているのですが、その中のひとつに「Tetavi」というイスラエルの企業が制作に携わったシステムがあります。UNICORN社も、このTetavi社とは協力関係にあったため、せっかくなら日本の企業同士で提携をしていこうとなったんですよね。
前田(U):はい、その通りです。おかげさまで「XR Ad」のサービスを共同で開発させていただき、先日そのプレスリリースも出させていただきました。
今後は、この「XR Ad」に加え、さらにもう一歩踏み込んだ取り組みをしていこうと考えています。
また「ボリュメトリックビデオ」を広告に活用すると「さまざまなデータを計測できる」という利点も生まれます。
ユーザーは広告のどこに触れ、どんなコンテンツを重点的に見たのか。私たちは、それらのデータをクレッセント社や広告主に提供することで、新たな価値の創出につなげていきたいとも考えています。この領域全体に対し、貢献することができれば嬉しいですね。
小谷代表(C):ありがとうございます。私たちも「ボリュメトリックビデオ」が当たり前のように活用される世の中を夢見て、これからも邁進していきたいと思います。
「ボリュメトリックビデオ」は教育の分野でも大活躍!?
田井(U):先ほどのお話を聞いていて思ったのですが……
「ボリュメトリックビデオ」を用いた“広告”を配信する際は、UNICORNなどの広告プラットフォームを活用すると思います。広告以外では、ユーザーはどのようにして、「ボリュメトリックビデオ」を体験できるのでしょうか?
小谷代表(C):実は最近「ボリュメトリックビデオ」を活用して制作した動画を、動画配信サービスのようにプラットフォーム上で配信できるサービスがリリースされたんです。
今までは映像制作のための一つのパーツだったのですが、これにより「ボリュメトリックビデオ」自体がメディアになることができました。先日、弊社でもプラットフォームを活用した「VolumetriX」というメディアをリリースしたので、ぜひご覧になってみてください。
田井(U):あれ、よく見ると、井谷さんがいらっしゃいます!
小谷代表(C):お気づきになりましたか。 何を隠そう、井谷さんは、クレッセントで一緒に働くメンバーでもあり、プロのBMXライダーなんです!
井谷さんは、平地や床で技を繰り広げるフリースタイルパフォーマンスの「BMXフラットランド」という競技で活躍されていて、全日本選手権、北米大会、そして世界大会で何度も入賞するほどの実力を持つ選手なんです。現在はコンテストやショーに参加しながら、私たちと一緒に「ボリュメトリックビデオ」を活用した事業にも取り組んでいるんですよ。
田井(U):BMXと言えば、東京オリンピックでも注目されていましたよね。私もテレビの前で応援していました!
井谷さん(C):実はそうなんです。バレちゃいましたね(笑)。
「どうしてプロのBMXライダーがこの会社で働いているのか」とよく聞かれるのですが……「ボリュメトリックビデオ」を活用し、もっと世の中にBMXの価値を届けていきたいと思ったことが、一緒に働くことを決めた大きな理由なんです。
例えば、BMXのトリックを学ぶためには、僕が子どもの頃は、雑誌や本を活用することが一般的でした。しかし、掲載されている文や、コマ送りの写真を見ただけだと、何をどうしたら良いのか、ほとんどわからないんですよ。
昨今は、配信サービスを利用して映像でも学ぶことができるようになりましたが、視点を自由に変えられないため、全てを理解するにはまだまだ難しいんです。もちろん、対面のスクールで学ぶのが一番効率は良いのですが、物理的に難しい場合もあります。
田井(U):確かに、技術を学びたい子どもたちからすると、まだまだ「痒いところに手が届く」環境とは言えないですね。
井谷さん(C):そうなんですよ。対してこの「ボリュメトリックビデオ」を活用した動画は、どこでも再生することができ、自由に角度を変えられたり、ピンポイントで再生を止めたり、拡大することもできる……。これほど技術の進歩を羨ましいと思ったことはありませんね。
そして、BMXのみならず「ボリュメトリックビデオ」を活用して、他のプロスポーツの発展・教育にも役立てたい。そのような思いで、現在クレッセント社で働いているんです。
小谷代表(C):スポーツのみならず、ビジネスシーンでも活用してもらう機会も増えています。例えば先日、マッサージ師を養成するための研修に「ボリュメトリックビデオ」を活用したいという依頼がありました。平面の動画で学ぶよりも、深く理解できることは間違いないと思いますね。
田井(U):私の知らないところで、教育環境がどんどん整っているんですね。自分の子どもの頃にも、こんな画期的な技術があれば……
井谷さん(C):今からでも決して遅くはないですよ!
田井(U):が、頑張ります!
今後「ボリュメトリックビデオ」を用いたコンテンツは、より進化していく
田井(U):本日は多くのことを教えていただき、ありがとうございました!「ボリュメトリックビデオ」について、少し詳しくなれました。
単に、未来を感じさせてくれる技術なのではなく、教育など、さまざまな分野で役に立つ、実用的な技術だということを肌で感じることができました。
小谷代表(C):こちらこそ、ありがとうございました。これからも、より広く世の中で活用していただけるよう、私たちも精力的に動いていく予定です。
例えば「ボリュメトリックビデオ」を活用して制作した映像を、テレビのセカンドスクリーンとして利用したり……、そんな環境を構築することも、近い将来夢ではないと思います。
田井(U):ドラマのワンシーンを、自分の好きな角度で観ることができるってことですね。
小谷代表(C):まさに、そういうことです。自分自身がドラマや映画の世界に参加できる。とても面白い試みですよね。
前田(U):さまざまな活用法が期待できそうで、夢がとても膨らみます。
小谷代表(C):少し自慢になってしまいますが、国内でもトップクラスの機材を揃えている私たちのスタジオは、世界の中でも引けを取りません。
その名に恥じぬよう、これからもたくさんのサービスを提供していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
田井(U):こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします!
編集後記(UNICORNブランドチーム田井より)
今回は、UNICORNブランドチームとしての、初めての取材でした。難しいイメージを持たれやすい「ボリュメトリックビデオ」を世の中に広めていくためには、どのように読者に伝えていけば良いのか。できるだけわかりやすく、興味を持っていただけるよう、企画、質問の構成などをしっかり準備し、取材に臨みました。しかし、取材当日は、とにかく内容を理解するので精一杯でした……!
ただ、実際に3D化した自分の姿を見ることができたり、「ボリュメトリックビデオ」の技術を活用して生まれる未来を想像することができて、私自身とてもワクワクしましたし、もっとこの技術を多くの人に知ってほしいと心から感じました。
今後もこのnoteでは、UNICORNブランドマーケティングチームの取り組みについてさまざまな発信をしていく予定です。わかりやすく、適切に読者の皆さんに伝えることができるように頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!
株式会社クレッセントについて
クレッセントは、世界標準モーキャプシステムVICONや、様々なハリウッド仕様のソフトウェアの総代理店として、日本および台湾の多くのVFX、VR、VP、WebTV等の製作に利用されるツールを提供しながら、且つ、コンテンツ製作にも参加しています。 映像スタジオを併設しており、4DViews社のボリュメトリックビデオキャプチャ システムとVICONのハイブリッド撮影システムを運用し、国内外の最先端の映像アーティストとのコラボレーションを実現しています。
—クレッセント社からのお知らせ—
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