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ポストクッキー会議2023「思い込みマーケティングからの脱却!ポストクッキー時代の実践すべき広告配信」

この記事は、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下 DAC)が主催する、「ポストクッキー会議2023」において、2023年11月22日に、UNICORNの代表取締役である山田翔が登壇したセッションのイベントレポートです。本セッションでは、UNICORN他、AudienceOne®を運営するDAC、UNICORNとAudienceOne®のデータ連携を可能にする英国ID5の日本市場進出を支援するPivot株式会社の3社が集まり、広告配信の違和感と理想を語り合います。


登壇者紹介

UNICORN株式会社
代表取締役 山田 翔 氏
独自面を保有するメガプラットフォーム以外の全広告枠に一括・網羅的に広告配信し、機械学習により価値のあるトラフィックを判断して自動で買い付けるDSPであるUNICORNを提供している。

Pivot株式会社
取締役 池田 寛 氏
海外のアドテクやマーケティングテクノロジーのソリューションで日本進出をしたい企業の支援を行っており、ポストクッキー時代において、世界で最も使われているイギリスの企業のIDソリューションであるID5を提供している。

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
ソリューションビジネス本部 データソリューション局 ソリューション推進部
部長 秋田 祥 氏
1億を超えるデバイスのIDなど膨大なデータを保有し、そのデータを解析して高精度な3rdパーティデータを生成/提供する国内最大級のDMP「AudienceOne®」を提供している。



本セッションのテーマは『思い込みマーケティングからの脱却 ポストクッキー時代の実践すべき広告配信』です。
来年から本格化するポストクッキー時代に備えるために、現状の広告配信の違和感と、あるべきマーケティングの理想を3社で語り合いました。

過度なターゲティングってどうなの?

Pivot 池田氏(以下、池田)
では、最初のお題です。

過度に絞り込んだターゲティングや、特定のセグメントだけに配信して欲しいという依頼がクライアント様からくると思うんですが、このあたりに感じてる違和感や本当はこうすべきと思う理想はありますか?

UNCORN 山田氏(以下、山田)
今回のイベントのテーマでもありますが、ポストクッキー、つまりクッキーを使ってユーザーを追いかけ回しちゃいけない世の中になってきているところもまずひとつ大事なポイントだと思います。
そもそも、ユーザーを勝手に識別して、追いかけ回しすぎた結果、こういう風に規制がかけられているので、今後も引き続きターゲティングし続けるっていうのはあまり良くないんじゃないかと思う部分もあります。

その中で、広告を配信する前から、ターゲットを思い込みで絞り込みすぎるということも起こってるのではないでしょうか。

上の図のように、皆さんが広告配信をする時に、効果が良いと思い込んでいる既知の領域と、配信したことがなく効果も良いかわからない未知な領域は、同じような円のサイズ感でイメージされていて、既知の領域の方を中心に広告を配信することが多いと思います。

しかし、実際は下の図のように、全くリーチもしたことがないユーザーの方が大半なのではないかと思います。

例えば、自動車商材であれば、漠然と自動車メディアが良さそうだと思いがちですが、自動車メディアを見ている人はすでに様々な記事等で情報を持っているので、広告にあまり反応しないんですよね。
なので、もしアウトドアに強い車の広告であれば、アウトドア関連のメディアに出したり、アウトドアに準ずる使い方を考えていくと、他にも効果が良いセグメントは往々にしてあります。

直接的に思いつくような、効果が良いとわかっている(思い込んでいる)ターゲットだけではなく、本来リーチすれば反応がありそうなユーザーはどんなユーザーなのかという発想をどんどん広げていくと、結果的に良い広告配信ができると思います。

池田
UNICORNやAudienceOne®のクライアント様の中で、何割ぐらいがこういった思い込みで絞り込んでいるターゲティングをしてるのですか?

DAC 秋田氏(以下、秋田)
AudienceOne®のチームでは、約8割ほどですね。最近はどんどん、よりニッチで細かいターゲティングを要望されることが増えました。

池田
DSPの立場ではどうですか?

山田
僕らは大きく2パターンの配信方法があり、ひとつは主にアプリクライアント様向けのパフォーマンス重視の配信、もうひとつは、ブランド広告主様の向けのブランディング配信です。
前者は、広告が配信されるべきではない違法なサイトを僕らがブロックすることはありますが、ほぼターゲティングはしていないです。
一方で、ブランディング配信の場合は、基本的にはターゲティングが強いケースの方が多いです。もちろん予算も限られてるので効果が良いところだけに配信することも当然なのですが、そうするとその先に繋がらないんです。

例えば、一部の予算だけ、新しいターゲットがどこにいるのかを探る探索配信する等、そういった配信があるといいなと思います。

池田
DSPのUNICORNでも、ブランディング配信においては思い込みでのターゲティングになってしまうことが多いんですね。
AudienceOne®の立ち位置で、過度なターゲティングについてどう思いますか?

秋田
そうですね。様々なデータを取れるようになってきているからこそですが、世帯年収がかなり高い人だけに当てたい等、世の中的に数%しかターゲットがいないようなところを狙いたいという依頼は非常に増えたと思います。

もちろんそれも重要なことですが、そもそもオーディエンスを絞ってしまうので、配信量が少なく、最適化がかからないことは結構多いです。

その上で僕らが考える理想は、UNICORNをはじめとして、DSPがどんどん新しいユーザーを捉えていき、その新たなユーザーがどのような人なのかを知るために、AudienceOne®のデータを使っていただく、ということです。
配信後に、どのような人に対しての配信が効果が良かったのかを分析して可視化することで、新たなターゲットを見つけることができます。

そうすることで、新しく見つけたユーザーを元にAudienceOne®のセグメントを作り、UNICORNで再度配信をしたり、様々なチャネルでリーチさせることができると思います。

池田
なるほど。つまり、まずはUNICORNをはじめとしたDSPで広く広告配信をし、どこに潜在ユーザーがいるのかをDMPのAudienceOne®で見つけ、セグメントを作り、DSPでさらに配信をしたり、メガプラットフォーム側の広告配信に生かすことができる、と。

更に言うと、ポストクッキーをきっかけに日本人のメインストリームであるiPhoneのSafariブラウザでも、共通IDなどを活用することで新たなターゲットを探していくことができるので、とても楽しみですね。


配信面についての思い込みってある?

池田
ブラックリスト等の、配信面での思い込みについてです。山田さんは何か違和感等ありますか?

山田
広告に携る方もキャリアが長い方がたくさんいらっしゃる中で、配信先の選定を漠然とした思い込みでされてる方は結構いるのではないかと思っています。

例えば、ゲームやマンガなどのアプリの場合、「年齢が高めの男性がずっと家でポチポチしてるだけなんじゃないか」という思い込みがあり、ゲームやマンガなどのアプリには配信したくない、等です。

また、マンガを読むために動画の閲覧が必要な、動画リワードと呼ばれる広告枠は、インセンティブを付けている枠だから質が悪そうだという漠然とした印象があって、なかなか利用が進まないというところはあります。

僕らで言うと、ゲームやマンガなどのアプリの動画リワード枠は、現在利用がどんどん進んでいて、若い世代がしっかり視聴し、全画面且つ音ありで広告が配信できる面として価値が高いと言われています。

これは、僕らが実際にゲームやマンガなどのアプリユーザーに調査したデータです。「【調査レポート】ゲーム・マンガアプリユーザー調査結果まとめ」を見ていただくと、ゲームやマンガなどのアプリは幅広い属性の方が使っているのを分かっていただけるかと思います。

また、自分で広告を見るかどうか選択できるオプトイン再生や、インセンティブがもらえるリワード広告に関する印象は、約半数程ポジティブな結果が得られているので、配信したことのないメディアの枠がどのような枠なのかをしっかりインプットして、どこに出すかを考えていくべきだと思います。

池田
みんな普通にゲームもやりますし、マンガも読みますよね。
動画リワード枠は、ユーザーも広告を見ることでインセンティブがありますし、しかもゲームだと特に音ありで聞いてもらえることが多いからクライアントも側も嬉しい、ユーザーも広告主もWin-Winの広告ですね。

このように、配信面やフォーマットを含めて過度なターゲティングをすることで潜在顧客へのアプローチに機会損失が生じている可能性があるということですね。

思い込みマーケティングになってしまっていないか、ポストクッキーを良いきっかけに、意識してみるのがいいのではないでしょうか。


CPCって安ければいいの?Viewabilityって高ければいいの?

池田
ということで次のお題です。
今度は広告指標の捉え方についてです。よく使われる指標として、CPCやViewabilityがありますが、そもそもCPCが安ければいいの?Viewabilityって低いと本当にダメなの?フリークエンシーコントロールってちゃんとやらないとどうなるの?等、そういった違和感はないですか?

山田
CPCをとにかく安くして欲しいというオーダーはこの市場で非常に多いオーダーのひとつです。

もちろん限られた広告費を最適に使いたいという発想の中で、わかりやすい指標として、認知広告だとCPCが重視されるケースは多いですが、中には思いきりCPC安くして欲しいというオーダーもあります。
例えば、記事内のレクタングルの広告枠は、大体安くても20円30円くらいがCPCの相場なのですが、にも関わらず10円以下でCPC配信したいというようなオーダーですね。

そうすると誤タップを誘導するような枠になってしまうのですが、本当にその枠を買って、その後にページを見てくれているのか、そのブランドに寄与してくれるのかというと、あんまり効果は無いのではないかなと思います。

また、CPCを安くしたいというニーズが増えると、パブリッシャー側も、誤タップを誘導してCPCが安くなる枠を開発するじゃないですか。
例えば、下記のような、レクタングルを2つ並べて、真ん中に小さな「バツボタン」があって、そのボタンが押せないという。



池田
そうですよね。それで本当に広告効果が良くなるのかという話ですね。

山田
はい。これはCPCだけに限りません。
デジタル広告全体で、特定のKPIだけを見てそこだけを良くしようとすると、その後に続くユーザーの動きが全く見えなくなるんです。

池田
そういう意味でいくと、Viewabilityもよく見られる指標ですよね。

山田
そうですね。
昨今Viewabilityが高い枠が良い枠で、Viewability80%以上にしてくださいというオーダーも結構増えています。
もちろん見られていない広告枠にお金を払うのはもったいないですが、Viewabilityが低いから悪い枠なのかというと、そうではないのではと、パフォーマンス配信の観点からとても思います。
例えば、Viewabilityが100%のアンカーバナーよりも、サイトの下の方にあるViewabilityがそんなに高くないインフィード広告の方が、インストール率が高いんです。
しかし、Viewabilityだけで見ると高くはないので、クライアント様は買いたがらないですね。

池田
WEBサイト見ていたら画面の下に常に出続けてるアンカーバナーよりも、サイトを見ていて記事を読み終わった後に出てくる、気になるクリエイティブの方が、Viewabilityは低いかもしれないけれどもロイヤルユーザーに繋がる確率が高いということですね。

最近ではユーザーの広告への注目度を示す「アテンション指標」などもトレンドですので、そのような指標を活用することで、本当の効果を見られるかもしれないですね。

フリークエンシーコントロールについて、違和感はありますか?

山田
はい。サードパーティークッキーが使えなくなることで、同じユーザーが何回広告を見たかが分からないという課題が、現在起こっています。フリークエンシーコントロールが効いていない状態ですね。

池田
iPhoneのSafariブラウザでも今まさに起きていますよね。

山田
そうですね。
僕らUNICORNは広告のクリエイティブインフォメーションアイコンから、この広告に対して違和感がある場合、フィードバックできる機能を持っています。

ユーザーからのフィードバックの傾向を見てみると、実は二つのパターンがあります。
ひとつは、性的な内容が強い・バイオレンスな内容がある等の、クリエイティブがユーザーに受け入れられていないパターンです。
もうひとつは、同じ広告が何回も出てくるといった、フリークエンシーコントロールが効いてない時です。こういった時にユーザーからは不快な広告だとフィードバックをいただくことが多く、これは同じユーザーかどうか識別できないポストクッキー時代に起こり得ることですよね。

ポストクッキーというと、ターゲティングができなくなることばかりに意識が行きがちですが、それに加えて、ユーザーと適切な頻度で広告でのコミュニケーションをすることもできなくなってきているので、どう解決していくのかを考えることはとても大事です。

池田
以前あるセミナーで聞いた話によると、Google ChromeとSafariに同じ予算で広告を配信した結果、iOSのデバイスばかりに広告が配信されたそうです。なぜなら、iOSではすでにサードパーティークッキーが規制されており、フリークエンシーコントロールができない状態だから。
不快な広告だと思われたのか、効果はあまり良くなかったようです。

こういうことが、来年からGoogle Chromeでも起こり始めます。
そんなときにID5を使っていただくと、フリークエンシーコントロールができるようになります。宣伝です(笑)。

実際、ID5は、ターゲティングをしたいという文脈よりも、どちらかというと配信の最適化に使いたいというニーズでご相談いただくことが多くて、まさにこの辺りも得意分野なんです。

というわけで、広告配信における違和感と理想について、過度なターゲティングや広告指標の捉え方という軸でお話していただきましたけれども、クッキーが使えなくなることは、良いきっかけだと思うんですよね。
もう一度、今回お二人が言ったような違和感と理想を生かして広告配信していただけると、無駄な広告費が減ったり、本質的な広告配信ができるんじゃないかなと思います。

最後に一言

池田
ID5をはじめとした共通IDは単なるサードパーティークッキーの代替手段としてのイメージが浮かぶと思うのですが、そもそもサードパーティクッキーが規制されるのはどうしてなのかという原点に立ちかえってみて欲しいのです。生活者にデータ利用の選択肢を提供し、セキュアな形で活用してもらえる手段が共通IDです。

生活者が不快になるような活用ではなく、例えば、フリークエンシーコントロールをちゃんとできるように使っていただくとか、広告配信の傾向を捉えるために共通IDを使って分析するとか、フレンドリーな用途に重心を置いて共通IDを活用していただけると嬉しいです。

山田
本日色々とディスカッションさせていただいたのですが、やはりポストクッキーの時代では発想を大きく変える必要があるなと思っています。
クッキーが使える使えないの話ではなくて、デジタルマーケティング全体において、今までいかに見えるデータに囚われすぎていたかという点にまず気づく必要があります。

細かくデータや効果が見られれば、それを正しいものとして信じたくなる気持ちも分かりますが、そのデータ自体が絶対的なものでもないと思いますし、今後は当然そういったデータが見られなくる世界になっていくので、一旦ここは、今までのことは全て忘れて、冷静に考えて、今後どのように「あるべき世界」に向かっていくのかを、しっかり考えていく必要があると思ってます。

先ほど池田さんがおっしゃられたような、細かくユーザーを識別していくよりも、もう少し大きな枠で物事を捉え、予算を使って本当にインパクトがあったのか、流れをしっかり評価していくことが必要になります。
そういったことが実現できるプラットフォームになっていけるよう、UNICORNもどんどん進化させたいと思っていますので、是非新しい取り組みに挑戦したい時は、ご活用いただけると嬉しいです。

秋田
私も今回のお話で、やはりDMPは、これまではターゲティングの観点で使われることが多かったですし、私も正直そういった考えに偏っていたと思います。

今回、このセッションでお話させていただいたことで、AudienceOne®は、ターゲティングだけではなくて、新しいターゲットを可視化したり、配信最適化の変数に使っていただくことで、マーケティングに貢献できるようなソリューションになって行ければと、改めて思いました。


編集後記

本セッションは、「ポストクッキー会議2023」での視聴者のアンケート調査結果において、満足度1位に選ばれました。
UNICORNでは、ポストクッキー時代の本質的なマーケティングを模索し続けていきます。UNICORNにご興味ある方は下記のフォームよりお問い合わせください。