リテールメディアとは何か、UNICORNを活用してできることとは?
こんにちは。UNICORNブランドマーケティングチームの竹村です。
UNICORN株式会社は、デジタルサイネージの効果測定、簡易運用管理ができるSaaSを開発するParsempo Ltd.(本社:イスラエル・エルサレム、CEO:Avi Schapiro、以下「Parsempo」)と協業し、リテールメディア向け広告配信プラットフォーム及び統合型デジタルサイネージの提供を開始しました。
リテールメディアとは「リテール=小売り」と「メディア=広告媒体」を組み合わせた造語であり、小売企業が持つ膨大なデータを活用し、配信を行う広告サービス全般を指します。
現在、アメリカ市場での成功をきっかけに、日本でも注目がされつつありますが、そもそもリテールメディアとはどういったマーケティングチャネルで、どのような価値をユーザーの元に届けることができるのでしょうか。
今回はリテールメディアについて深掘りをしていくと共に、UNICORNが今後どのようにリテールメディアを活用していくのかを、お伝えしていきます。
今「リテールメディア」が注目される理由
リテールメディアとは、顧客の購買データ、あるいは行動データといった、小売業が独自に収集・所有するデータ、いわゆる「ファーストパーティー・データ」を活用し、さまざまなメディアを通じて広告を配信する手法を指します。
「小売業が配信する広告」と言うと、一見、店内に設置されたデジタルサイネージから広告配信を行う手法をイメージされるかもしれませんが、広告媒体となるのは、店舗やスマホアプリ、ECサイトなど、小売業が従来持っている「顧客との接点」全てとなります。ゆえに、オンラインでの広告配信やクーポン配信、インストアメディアでの販促活動なども含まれます。
ではなぜ、この「リテールメディア」が今注目されつつあるのでしょうか。それには主に二つの理由があると言われています。
理由① アメリカ市場での成功
一つに、アメリカ市場で新たな成功を収めたことが挙げられます。
元来、国内海外問わずリテールメディア市場は、Amazonを代表とする「オンライン上の小売店」が、市場のほとんどを占めていました。ユーザーの購買・行動データを活用し、ターゲットに対して的確に配信されるデジタル広告には、誰もが一度は触れたことがあるでしょう。ゆえに、リテールメディア市場は昨今急激に成長し始めたのではなく、実は以前から私たちにとって身近な存在なのです。
そんなリテールメディアの中の、隙間産業であった「オフライン広告」に目を付けたのが、アメリカの小売世界最大手のウォルマートでした。ウォルマートは、2021年初めにデジタル広告を扱う部門を「ウォルマート・コネクト」として再編し、ユーザーの購買・行動データを活用した店舗広告事業を強化。その取り組みが全米で大きな成功を生んだことで、世界中の小売店・代理店が注目をし始めたのです。
なぜ、ウォルマートはオフライン広告に注目をしたのでしょうか。その背景には、オフライン上のリテールマーケティングに対して、次のような課題の存在があったと考えられます。
・膨大な消費者データを集計、分析するための基盤が整っていないため、データを活用したマーケティングができない
・計測方法が小売店によって異なり、業界としての広告評価手法も定まっていない
・在庫状況、配貨状況の確認に非常に手間がかかる
しかし昨今、キャッシュレスレジやモバイルオーダーが一般化されたり、ポイントカードがデジタル化されたりといった市場の変化も影響し、ユーザーの購買・行動データの集計、活用が従来よりもスムーズに行えるようになりました。また、技術革新が進んだことで、広告配信データや映像解析データを、オフラインの店舗でもマーケティングに活用できる仕組みが徐々に開発され始めました。ウォルマートは、そうした市場動向を見据え、店舗広告事業を強化し、成功に導いていったのです。
理由② 「3rd Party Cookie」の規制
二つ目のきっかけは「3rd Party Cookie」の規制が本格的にスタートしたことが挙げられます。
プライバシー保護規制の広がりの影響で、ウェブサイトをまたいでの消費者の閲覧履歴を共有する「3rd Party Cookie」の規制が2022年以降段階的に行われるようになりました。
しかし、小売店の持つ貴重な「ユーザーの購買・行動データ(1st Party Data)」を活用すれば、これまで通りターゲットに対して的確な広告を配信することができ、また従来以上に本質的な価値を持つ広告をユーザーの元に届けることが可能となります。
そうした理由で、インターネット広告業界全体が「ユーザーの購買・行動データ(1st Party Data)」の活用に大きくシフトをし始めたのでした。
その他にも、「ユーザーの購買・行動データ(1st Party Data)」を活用すると、下記のような利点が挙げられます。
・同意を得たユーザーのデータのみを活用するため、ユーザープライバシーへの配慮が行き届く
・クリーンで鮮度の高い情報に基づく広告配信が可能
・正確であり効果的な、パーソナライゼーションが可能
昨今「リテールメディア」が注目されるようになったのは、主に以上の経緯によるものだと考えられています。しかし日本では現状、期待されているほど市場は拡大しておりません。
その理由はいくつかありますが、特に日本の小売市場がアメリカと比べ、寡占市場であることが大きく影響していると考えられます。
日本では、中小系の小売店が各地方に点在し、データ集計や活用の整備状況にはばらつきが生じています。効率的な運用を行うには、小売店が抱えるオペレーションの課題を含め、解決策を提示し、共同で向き合っていく必要があるでしょう。私たちUNICORNも、そうした点を視野に入れながら、リテールメディアネットワークの構築に向けて現在取り組みを進めています。
UNICORNのリテールメディアへの取り組みについて
UNICORNはおかげさまで、これまで多数のブランド広告主の広告配信をサポートしてまいりました。現在は買い付け可能なimp数が月間6,000億に到達するなど、DSPとしては国内最大級の規模を誇っております。リテールメディアに対し広告配信を行う際も、UNICORNがこれまで得た知見や経験を生かし、運用を行うことが可能です。
そしてこの度、リテールメディアに対しての取り組みをさらに加速させ、提供できる価値を高めていくため、秀でた技術力を持つ企業「PARSEMPO」と協業し、リテールメディア向け広告配信プラットフォーム及び統合型デジタルサイネージの提供を開始しました。
Parsempoは、2019年創業のイスラエルのスタートアップ企業です。プライバシーに準拠したデジタルサイネージの効果測定、運用管理を可能にするSaaSを開発しており、データを活用したマーケティングの技術にも長けています。すでに欧州、北中南米、アフリカの13カ国で事業を展開しており、UNICORNは、Parsempoの日本展開におけるパートナーとして資本業務提携を行いました。
UNICORNは、カメラ付きAndroidデバイスの提供に加え、Parsempoの仕組みを活用することで、デジタルサイネージに対してデータに基づいた自社コンテンツや広告配信を行うことが可能となります。サイネージの視聴時間、視聴数、再生数、年齢、性別などの匿名且つリアルタイムのエンゲージメントデータを活用した広告配信ができるようになるほか、店舗のPOSデータと連携を行うことで、配信した広告が売上にどれほど寄与することができたかなどの数値を、可視化することも可能です。
もちろん、AIによる映像解析、デモグラフィック分析は、GDPRやCCPAにも準拠したユーザープライバシーに配慮をした仕様となっています。他にも、Parsempoの仕組みを活用すると、取得したデータに基づき、ターゲットに近しい属性の多い店舗を抽出し、広告配信を行うことなども可能です。
とはいえ、私たちの取り組みも、現状はクリアしなければならない課題が多いことも事実です。例えば、ユーザーが商品を手にしたきっかけは、本当にサイネージ広告による効果なのか否か。現在の解析能力では、その答えを極めて正確に予測できるわけではありません。そうしたデータによる説得力を向上させるため、効果検証を行いながら、今後も引き続きアップデートを行っていく予定です。
なお、リテールメディア向け広告配信をする上でも、クリエイティブは販売の寄与に直結するため、非常に重要です。クオリティの高いクリエイティブ制作は、UNICORNの強みの一つであり、今後も独自の価値として追求を行っていきます。
リテールメディア市場への今後の期待
新型コロナウイルス感染症の影響により、ここ数年で日本のEC市場には、さまざまな変化が生まれました。しかし、経済産業省が公表する「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、BtoC市場のEC化率(ECの市場規模が商取引全体に占める割合を示す指標)は9.13%に留まり、まだ消費の9割以上がオフラインであることが実情です。
今後、EC市場が拡大し続けることは間違いないと見ていますが、リテールメディアも含めマルチチャネルでの広告展開を行っていくことが、これからの時代に必要な取り組みであると私たちは考えています。
また将来的には、バーチャル空間市場や、ライブストリーミングといった、新たなサービスも増え、小売市場の販売チャネルも都度拡大していくことになるでしょう。私たちUNICORNは、そのような新しいテクノロジーを受け入れ活用し、オンライン・オフラインの垣根を超え、これからの時代をリードしていく存在を目指してまいります。
なお、リテールメディアは、広告配信以外の用途に対しても、可能性を秘めている存在です。例えば、昨今社会問題化されている「フードロス」の対策にも、応用することができるでしょう。商品の個数をリアルタイムに、かつ正確に把握することができれば、食品が多く余っている場合に、店舗の近くにいるユーザーにクーポンを配信したり、リテールメディアにて商品の案内をすることが可能となります。
UNICORNは、そうしたリテールメディアによる新たな可能性をこれからも追求し続けてまいります。今後も、UNICORNの提供するサービスにどうぞご期待ください。
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